すれちがいの邂逅。 彼は北へ私は南へ。
金山からの帰宅中でした。
乗り換えのホームですれ違い様、
「よっ!」
と軽く肩を叩かれた。
見てみれば 、いつかの友人であり、上司であり、そして袂を分かった方が目の前に。
「久し振り、元気?」
と笑顔で声を掛けてきた。
向こうもちょうど私が乗ってきた電車に乗り換えのタイミング。
私は自分でもはっきりわかる程、ぎこちない笑顔をして、
「ええ、まぁ。何とか。」
と答え、向こうは笑顔で、
「じゃあ、また!」
と車内へ。
私は自分の乗り換えの車両に。
座席に着いてから、障子紙にスポンと穴が抜けたような、そんな心持ちに。
うん、これは、
完っ全に、
向こうが大人だ。
逆の場合だったら、声を掛けただろうか?
いや、多分間違いなく、
声を掛けていないだろう。
袂を分かったあと、
彼は彼で、
私とは違う形でいろいろあった事は、
風の便りで聞いた。
また、彼と何か一緒にする事はない。
だが、
一杯くらいなら、呑んでも良いかもと思った。
一本取られました。
なんだかひとつ枷が取れた夜です。